ドラムがあるのと無いのとでは、こんなに違う。手間暇も費用も歌の難易度も。だけどハマった時の喜びもひとしお。

僕の古い知人に、ある組合の理事長をやっている人がいます。先日、その人から電話が掛かってきました。

「石橋君、今年の6月にうちの組合で大きなイベントやるんだけど、バンドを手配してくれないだろうか?」

聞くと、宴会の盛り上げ役にバンド演奏を入れたい。参加者は年配の”オールディーズ世代の踊りたい人たち”が多いから、ドラムも入れたフルバンドで頼む!ということでした。

けれど、この話、少し話を深く聞いてみると”不可能”であることがはっきりと分かりました。すでに予算が決まっていたからです。

僕は電話で話しながら「ミュージシャンの出演料・レンタル機材費・PA費・・・おおよそ、このくらいの費用はかかるだろうなあ」と、頭の中で算段をしていました。僕はこれまでに何度も”出張バンド”の一員としての仕事経験があるので、大体のかかる費用は分かるのです。

一通りお話を伺ったあと、僕ははっきりと「〇〇万円くらいはかかりますよ」と伝えたところ、「そんなにかかるのか!」とビックリされた様子でした。・・・確かにこの世界の事情を知らない人からすると、僕が申し上げた金額は少々高く感じるかもしれません。

僕は説明を続けました。「ミュージシャンの出演料に音響操作をする技師さんの報酬、ドラムやアンプなどのレンタル機材費用・・・そういったものが経費としてかかります。ドラムを入れて賑やかにやるとなると、最低限これだけは必要になってくるんです」

その人は僕の説明を理解してくれて、今回はバンド演奏は諦める、とのことでした。

この時、僕はしみじみと思いました。「ドラムを入れるか入れないか・・・費用的にもこれが大きな分岐点だなあ」

 

僕たちがどこかで演奏をしようとする時、いつもネックになる楽器はやっぱりドラムなんですね。

例えばギターとキーボードとベースの3人で演奏する・・・これは割と簡単に実現可能です。特別に強度の高いステージも必要ありませんし、大きな音を出すための大きなアンプも要りません。ステージも狭くて大丈夫だし、モニター(自分の楽器の音や声を聴くためのスピーカー)も、いっそのこと無しでも可能です。

これがドラムを入れるとなると、途端に大変になってしまうのです。まずドラムセットを持っていくか借りるかしなければなりません。それからドラムの音は何しろ大きいものですから、それに比例して大出力のアンプが必要です。もちろんモニター環境も整えなければなりませんし、そのためにはPA技師さんの手を借りることになります。当然予算も倍ほどかかることになります。

そうなんですね。上の2例、ミュージシャンの数だけみればドラマーが一人増えるだけです。けれど、ドラムを入れるとなるとそれに付随して用意しなければならない機材や人が芋づる式に増えてきます。

ドラム入りとドラムなしとでは、リハーサルにかかる労力もまるで違います。リハの時点からPA技師さんと連携をとって音を綿密に作っていかなければいけませんので。

そしてシンガーにとってもドラムの音は、時には”難敵”となります。ドラムの音に誘発されるように各楽器の音量はどんどん大きくなる可能性があります。こうなるとシンガーは”強すぎる息で歌う”という、テクニックを害する一番の要因と隣り合わせになってしまいます。

 

さて、冒頭のような一見のあと、数か月ぶりに再会したドラマーとライブで共演する機会がありました。

僕は楽しみにしていました。彼は後輩の中でも、ひときわ練習熱心な男だからです。

そんな彼、数か月分の成長の証を見事に演奏の中で披露してくれました。以前よりもドラミングが力強くなっており、正確さも増していました。そして、そんな彼に引っ張られるように僕たち他のメンバーの演奏も上々で、お客さんにも楽しんでもらえたことと思います。

 

そうなんですね!やっぱりドラム入りで演奏すること・・・ハマれば素晴らしい効果をあげるものなんです!ドラムは面倒で金が掛かって重たくて、おまけに値段が高い・・・けれど、素晴らしいドラマーの演奏は、バンドの音を何倍も魅力的なものにしてくれて、お客さんの心に躍動を残してくれるものなのです。

「準備が面倒でお金がかかるものも、うまく使えば素晴らしい効果をあげる」といったところでしょうか。

 

以上、ご精読ありがとうございました。

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