良い音色を求めて楽器(=喉)を改良する、既存の音色に満足しないこと。筋肉の動きの勉強が音楽性を高める

僕は30代の頃のほぼ8年間、クラシックギターをやっていました。ジョンウィリアムズ(同姓同名の映画音楽の人とは違う人です)が弾く”アルハンブラの思い出”に感動しすぐさまギターを購入、さらにはギター教室に入門・・・あの時はとにかく「早くあんな風に弾きたい」という抑えられない衝動がありました。

ピアノを習う、ギター教室に通う、ボイトレを始める・・・音楽をやり始めるには、そんなある種の”衝動”が必要なのではないかなと思います。「この曲、絶対歌えるようになりたい」という憧れと申しますか。陳腐な表現になりますが、そういう初期の”熱い思い”を持ち続ける事が上達を加速させてくれます。(とはいえ僕の場合、ボイトレを始めたきっかけは「お店のステージで歌わなければならない」という、義務感を伴ったものでしたが・・・)

さて「クラシックギターの名曲」といえば、上記に挙げた”アルハンブラの思い出”と並ぶ、いや日本ではそれ以上の知名度のある曲が「禁じられた遊び」だと思います。誰でも一度は聞いた事のある切なく悲しいメロディ・・・シンプルなアルペジオで奏でられる・・・あの曲です。同名映画の主題歌として知られていますが、本来は「愛のロマンス」というタイトルを持つスペインの古い民謡です。「禁じられた遊び」はクラシックギターの巨匠ナルシソ・イエペスによって演奏されましたが、イエペスの名演によりこの曲は不朽のものとなりました。またイエペス自身も、以降ずっと「禁じられた遊びを弾いた人」という冠付きで語られるようになりました。(本人がそれを望んでいたかどうかは分かりませんが、コンサートのアンコールでは必ず”禁じられた遊び”を演奏していたようです。それがお客さんのニーズだったのでしょう)

そんなナルシソ・イエペス、とても精力的に演奏活動を行った人でした。また一人の音楽家としてとても興味深い考えをギター演奏に持ち込んだ人です。そしてそれはボイトレ学習者にとってとても参考になるものだと思います。

 

理想の音色のためなら楽器だって改良する、新しい楽器を作る

イエペスの写真を見ると、やたらと弦の数の多い、サイズもとても大きいギターを弾いています。これは彼が有名なギター製作職人と共同で開発した「10弦ギター」です。

イエペスも若い頃はもちろん、通常の6弦ギターを弾いていましたが、段々とその音色と音量に満足出来なくなり楽器の改良を思いつき、ついには独自の「10弦ギター」を作るに至りました。色々と悩んだあげく「よし、それなら新しい楽器を作ってしまえ!」といったところでしょうか。

僕が凄いと思うのはイエペスの音色に対する飽くなき探求心です。彼は通常の6弦ギターの演奏家として、既にかなりの知名度を得ていたにも関わらず、自分の楽器の出す音色に満足することが出来なかったのです。

「自分の楽器(=喉)の出す音色を、より良いものにする」・・・ボイトレ学習者が失ってはいけない心構えです。

僕の仲間や先輩には「この人、歌が上手いなあ」と、皆が唸るような人もいますが、そういう人に限って自分の歌声や歌唱テクニックに関してシビアに研究し、さらに良い音色を求めて”楽器(=喉)の改良に勤しんでいる印象です。ボイトレをして歌声の音色を高めていくことは「楽器の改良」に他なりません。

ギターや歌に限ったことではなく全ての音楽演奏家は、自分の楽器の出す音色に常にシビアでなくてはいけないと思います。

 

筋肉の動きを勉強することが音楽性を高める事に繋がる

さらにイエペスは体の動きや筋肉について勉強することがスムーズな指運びによる滑らかな演奏を実現し、さらには曲の理解や感情表現など、音楽性を高めることにも繋がると考えていました。この発想はボイストレーニングにおける”筋肉”と”音楽”の関係にとても近いものです。

例えばアンザッツは、一言でいえば喉周りの筋肉の”筋トレ”であると言えます。けれど「アンザッツをやることによって喉周りの筋肉が鍛えられ、スムーズに声が出るようになる」→「歌の自由な表現が可能になり、音楽性が高まる」といった流れになるはずです。つまり筋肉の勉強なくして、高い音楽性は実現しないのです。不自由な喉では豊かな表現の歌を歌うことは難しいはずです。

 

今回は巨匠ギタリストであるナルシソ・イエペスについて、ボイトレに関連させて書いてみました。

最後にイエペスの弾く「禁じられた遊び」(10弦ギターによる演奏)を載せておきます。

聴いていると、ちょっと物悲しい気持ちになりますが・・・お楽しみください。

以上、ご精読ありがとうございました。

筆者のプロフィール、ボイトレへの考え

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