【リードの言葉】あなたの声は”本来の声・自然な声”ではない。今の声を伸ばそうとしてはいけない

真の音質というのは、必ずと言ってよいほど未知のものであって、この身体の楽器のメカニズムがまだ完成を見ないうちに、ある特定の音質を自然な声の〈音色〉のように見なして育成しようと試みることは、断じて避けるべきです。

A君の歌声を聴いたBさんは言いました。「君は良い声をしているなあ!僕は自分の声に自信がないから羨ましい限りだよ!」

カラオケボックスの中、発表会の控室、ライブハウスの楽屋などでは、このような会話が普通に交わされています。もちろんいつ聴いても何の違和感も覚えない言葉ですね。

世の中のほとんどの人は「今の歌声が”本来の歌声”」「人はそれぞれに与えられた歌声があり、それは変えられない」と信じているでしょう。

けれど、冒頭に引用した三大ボイストレーナーの一人、コーネリウス・L・リードの言葉には、それを覆す意味が込められています。

冒頭のセリフのやり取りの「Bさん」は自分自身の本来の歌声をまだ知りませんし、A君とて同じことなのです。”種族としての人間”という大きな枠組みの中では、誰もが「壊れた喉で歌っている」のですから。

 

あなたは自分自身の”本来の歌声”を、まだ知らない

あなたが「私の歌声はこれだ」と思っている歌声は、「あなた本来の歌声」ではない!とリードは書いています。

つまり、仮に今のあなたが「キンキンとして鋭い」「籠っていて暗い」といった声質のみならず、「歌える音域が狭い」「太い高音が出ない」といった自分の声への不満や悩みを持っていたとしても、絶望的になる必要は全くないということです。

リードは、あなたの本来の声は「未知」である、と書いています。つまりあなた本来の歌声は、あなた自身も周りの人もまだ一度も聴いたことがない、ということです。

僕たちは「今の歌声=本来の声」という先入観を持ってしまっているため、仕方なしにその延長線上で問題を解決しようとします。「自分の声は籠っていて暗いからマイクに上手く乗らない」→「だからPA技師さんに音質を変えてもらって対処する」もしくは「(弱点を覆い隠してくれる)高性能マイクに頼る」・・・これは「今の歌声=本来の声」であるという前提での問題への対処です。(確かにライブの直前となってはボイトレ的な対処(喉の機能を高める目的の)は不可能でしょうが・・・)せっかくボイトレしているのですから、いつまでも”PA技師さんの腕”や”マイクの性能”に頼らずに、自分の歌声に向けた根本的な解決に向かっていきたいものです。

 

”今の歌声”をそのまま育てようとしてはいけない

例えば、あなたが自分の声を改善したいと願ってボイストレーニング教室に通うとします。そして先生の前で何か歌ってみます・・・

「なるほど分かりました。さあ、今聴いたあなたの声を(このままの音質を保ちながら)もっと強くしていきましょうね!」・・・

これでは、ボイストレーニングとしてはあまりにも寂しい対処です。これは正に「ある特定の音質を自然な声の〈音色〉のように見なして育成しようと試みること」に他なりません。人間の喉が持つ本来のポテンシャルからみると、大変勿体ない事です!

やはり現状の声は”自然な声=本来の歌声”ではないと考えての訓練をすることが、本当のボイトレだと言えます。

そうなると「声の材料(地声・裏声)」に対する働きかけが必須となります。つまりボイトレの3つのプロセス(声区の分離・強化・融合)の最初の一歩(声区の分離)に取り掛かることが必要です。

 

まとめ

ボイトレは下手をすると”今の歌声”を育てていく、という方法を取ってしまいがちですが、それは間違いです。これは”誤った先入観”以外の何物でもありません。

具体的に、例えば・・・今あなたが既に手にしている地声と裏声を、そのまま繋げてみましょう!という練習は”未知なる素晴らしい歌声”をみすみす諦めてしまう事に等しいのです。

「声区の分離」は”一旦リセットする”という意味合いともとれます。正しくボイトレを行なうことは時間がかかり、時には”後退”とさえ感じる時期すらあると思います。けれど「根本的に解決する」という事は何事においてもそんなもので、全てが万事右肩上がりとはいかないものです。

リードは「楽器のメカニズムがまだ完成を見ないうちに・・・」とも書いています。この場合の”楽器”とは、もちろん”喉”のことを指します。

ギターを思い浮かべてください。ギターという楽器のメカニズムが完成するのは弦を6本全て張り終え、調弦を済ませた時です。1本しか弦が張られていない(楽器のメカニズムの完成をみない)ギターがまともな音を出すはずがありません。

つまり、あなたの今の歌声は、”弦が欠けているギター”のようなものなのです。

 

以上、ご精読ありがとうございました。

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